社会の灯る光になるための旅のはじまり(2) 私たちは鎖につながれた象

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さて、前回に続いてセミナーで印象に残った・感銘を受けたお話をご紹介しましょう。
 
いくら自分の強みを見つけたとしても、それを伸ばす妨げとなっている壁を壊さないと、強みは発揮されません。その壁は誰もが持っている、ある意味でやっかいな、自分で勝手に作り出したものです。大きくわけて2つの種類が存在します。①育った環境、と②社会的な束縛、です。
 
①の育った環境のことは、「象と鎖」の話がそのことをよく説明してくれます。小象を小象の力では決して抜けることのない杭と結んだ鎖につなぎます。小象は最初は何とかして鎖がぴんと張ったその先に行こうと頑張ります。しかしやがてどうやってもその鎖の長さより先には行けないことを学びます。そのまま象は成長します。やがて大きくなった象はその杭を抜くだけの十分な力があるにも関わらず、それより遠くには行こうとはしないそうです。
 
②は「サルとバナナと水のお仕置き」の話がそのことをよく説明してくれます。サルをグループにして囲いの中に入れます。中央に梯子があって、その梯子にのぼると届く高さにバナナがつるしてあります。当然サルは梯子をのぼってバナナを取ろうとします。すると、取ろうとしたサルばかりでなく、グループのサルにも高圧の水が噴射されます。バナナを取ろうとしたサルはたまらずバナナを取るのを諦めます。グループの他のサルたちもとても不快な思いをすることになります。これを繰り返すうちに、どのサルもバナナを取ろうとはしなくなるそうです。サルを1匹囲いの外に出し、入れ替わりに新入りのサルを仲間入りさせます。水の噴射のことを知らない新入りのサルは真っ先にバナナを取ろうとします。そうすると周りのサルたちはそれを必死に阻止します。新入りのサルはバナナを取ってはいけないことを学びます。一匹出して新入りを入れて…を繰り返します。ついには、水の噴射の経験をしたことのあるサルは一匹もそのグループの中にはいなくなります。しかし、それでも、バナナを取ろうとするサルはいないそうです。そして、同じように新入りの行動を必死に阻止するそうです。
社会的な束縛の中には、意味を失ったものがたくさんありますし、周囲の目を気にする気持ちが、私たちの鎖となっている例は、おそらく挙げたらきりがないことでしょう。
 
育った環境が原因にせよ、社会的な束縛によるものにせよ、否定的な思いクセを直すのはたいへんです。一念発起したとしても、脳の回路がそれを放棄するようになるまでには少なくても20日はかかり、前向きな考えに変わるまでにはさらに20日が必要だそうです。
 
僕の経験でも、育った環境や周囲から受けたマイナスの経験から脱却することは容易ではないことは理解できます。
記憶には、「足跡」と「化石」があるそうです。足跡は風や雨により容易に消えるものです。しかし、化石はすでに実態がないにも関わらず記憶の世界の中に存在し続け、それが生きていたときのことを呼び起こします。悪い経験を、学びとしてとらえ、足跡を化石にしない知恵を持つことはとても重要なようです。
 
では、化石を消す魔法の言葉はないのか? 1つあるそうです。それは「許す」ということだそうです。
僕は人と話すとき強く印象を受けることがあります。それは、親や友人のことを悪く言う人に会うと、年齢に関係なく「大人になれない人」という印象を受けてしまいます。もしかしたら、化石の多い人なのかもしれません。
 
講師は次のように言っていました。「間違ったことを正しかったと思いなさいということではないのです。正しいか間違っていたかという次元と許すか許さないのかという次元は違うという認識を持つということです。心の中に過去の鎖があることが「自分の強みの成長を阻害する最大の壁になる」という科学的な事実を言っているのです。」
そして、講師は休憩に入る前に次のようにその講を結びました。「正しい判断は、『正しい場所で、正しいペースで、正しい人といっしょに行うという3つのどの要素が欠けても生まれない』ということを忘れないでいただきたい。正しい場所とは…心理学では『安全な場所』という言い方もされます。言い換えれば、心に壁がなく平安である状態を言います。」
 
 
次回に続く。

社会の灯る光になるための旅のはじまり

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今の僕のテーマは、どうしたら社会に貢献できる自分になれるかということです。どうやら、最近の自分の関心は結局ここに集中している…と気づきました。そのために、自分の強みを発見して、どう社会に貢献するか・・・を考えるセミナーに参加しました。このカリキュラムは大学における以下の実験結果からアメリカで誕生したものです。
 
80%は憶えているという理解度で学生が読む速度を調べたところ、平均は1分間に90Wordsという結果だったそうですが、その中に350Words/分という卓説したグループが存在したそうです。そこで大多数の90Words/分のグループと、一部の350Words/分に分けて、6週間の速読の訓練をしました。
 
6週間後90Wordsの集団は140Words/分にまで、60%の進歩を見たそうです。意外だったのは350Words/分のグループです。すでに能力が開花しているのかもしれないと思われたグループですので大きな伸びを期待していなかった専門家も多かったようですが、2,970Wordsまで、8.5倍にも伸びたのです。
 
この研究を主導した博士は、その後40年かけて、人の能力を600に分け、さらに34のカテゴリーに分けました。どの能力がどの能力より優れているということは決してありません。どのカテゴリーも必要なチェーンの輪のように、私たちの社会生活を維持・発展させるためには必要な要素だそうです。
 
ここで大切なことは、欠点を克服するための努力はとても大きなものが要求されるけど、せいぜい5ポイントか6ポイントが改善されるだけで、その努力を長所を伸ばすことに使えたら、能力を5倍にも10倍にも延ばせる可能性がある・・・という科学的な結論です。
 
 
次回に続く。

人間関係の4つのフェーズ

昨日に続いてリーダーのためのセミナーで聞いたお話をもう1つご紹介します。
企業にとってリーダーシップが強く求められるということは、言い換えれば、一人の力でできることはとても小さい…ということ表しています。チームそしてチームワークをベースとして、リーダーシップは発揮されます。優れたリーダーは、一方で優れた人間関係を作れる人でもあるわけです。
 
人間関係は4つのフェーズがあるそうです。
 

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フェーズ1は、人間関係を失い孤独な状態です。周囲に人が多くてもこの状態になることはあります。この人間関係を失った状態を回復しようとするときに、悪い人間関係や、偽りの人間関係が生まれることがあります。イエスマンでいること、本当のことを言うと壊れそうでついつい相手に合わせている…いうべきことを仕舞ってしまう…という関係はフェーズ3かもしれません。
私たちが実現すべきなのはフェーズ4であることは言うまでもありません。そうでないと、本当のチームワークは生まれないし、充実感や達成感も難しいかもしれません。大切な成長の多くは、人間関係の中から生まれると信じているのは、僕だけではないと思います。フェーズ3が、どれだけ人をむしばみ、会社の成長を妨げるものであるかを僕もずいぶんと見てきました。官僚的…もフェーズ3の典型かもしれません。
しかし、セミナーではある重要な示唆がこれに加えられました。このセミナーを受けて本当に良かったと思ったのはここからです。フェーズ2やフェーズ3から脱して、フェーズ4に達するためには、ある扉を開かなければならない…というのです。
 

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その扉とは…自分自身だそうです。自分を開く…言い換えれば自分の弱さを開くこと、別の角度から見れば「謙虚な人」ということになりそうです。
結局フェーズ3になってしまいがちな自分を、組織が悪い、だれだれが悪い、と言いがちですが、本当は自分がかわいいからですよね。僕もそうですから…。
自分を開く…ん~、これは簡単じゃないぞ!

カンテラの灯り

土曜日にリーダーのためのセミナーを受けました。お話をしてくださったのは、ダラスから来られたアメリカ人です。ビジネスマンとして、事業家として大成功を収めた彼は、一時日本企業のエンジニアとして開発の最先端に立ったこともあったそうです。今は、優れたリーダーが世界に一人でも多く生まれることを願い、世界を回り「リーダーとは?」を語っています。リーダーとしての基本的な資質は、「周囲の問題ではない。あなたがどこにいるかも問題ではない。地位も関係ない。成長し続けているかが重要です」と、人の成長の上に築かれるものだと説きました。その彼のリーダー観の原点は小さいときのあるエピソードにあったそうです。

週末に家族でよく湖に行ったそうです。人気のない、電気もない、そして道も途中で途切れて歩かなければたどりつけないその湖は、家族の憩いの場だったそうです。そこには大小2つのボートがあって、よくそのボートに乗ったそうです。あるとき、家族が2つのボートに分かれて湖の真ん中に出ていったとき、彼はどうしても自分でボートを操縦してみたい…と言ったそうです。お父さんはそれを許し、お母さんと二人が小さなボートに乗り岸にもどり、彼は妹と二人で湖を探検したそうです。ところが、やがて暗くなり、彼は完全に帰るべき岸を見失いました。妹は兄を責め、そしてお母さんは、二人だけでボートに乗ることを許したお父さんを責めたそうです。でも、お父さんは、その時に自分のすべきことを考えたそうです。あるものをボートに載せ、小さなボートで湖の真ん中に出て行きました。そして、湖の真ん中まで来ると、持ってきたものを高々と掲げたそうです。それはカンテラでした。ひときわ明るいカンテラをボートに載せて漕ぎ出たのです。その灯りは湖のどこにいても見えるものだったそうです。やがて、彼と妹の乗ったボートがその灯りを頼りに近づいてきたそうです。
 
 

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人が迷うとき、暗闇にいると感じるとき、向かうべき方向を示す灯りとなること…そういうリーダーになりたいと思いました。まだまだ成長が必要ですが、そう誓って帰ってきました。

ワトソン君! 上流をさがそうじゃないか!

塗装にとって最もこわいトラブルがはく離です。どんな優れた塗膜も、仮に20年間以上にわたって風雨や紫外線に耐える性能を持つ塗膜だったとしても、はがれてしまっては何の価値もありません。その塗膜が予想外に早くはがれてしまったために、ご相談に乗ることになりました。
 
塗装では、多くの場合原因は工程の上流側にあります。例えば、塗膜に泡状のものが表面に出現したり、表面に小さなふくれが生じている場合、多くは加熱乾燥工程の前半側に原因があります。
このような、剥がれが生じた場合、硬化不足が疑われるケースも多くあります。しかし、もしそうだとすると、温度が上がりやすい製品の板部より、柱となるアングル材部に剥がれが多く生じるはずです。しかし、そのような傾向はありません。
実際に計測していただいた炉内の製品温度グラフをみると、アングル材部の温度は適切な温度まで上がっていました。むしろ、温度の上がりやすい板部の方が過熱気味になっているくらいでした。温度グラフからみると、炉の温度はもう少し下げた方が良さそうでした。
高い品質が求められる塗装の多くは、熱により反応させて、高分子の良質な硬化塗膜を得る熱硬化型塗料が多く用いられています。さまざまなトラブルの原因をさぐる手がかりとして、炉内の製品温度グラフが定期的に測定されていると、たいへん助かります。
しかし、たしかに過熱気味ではありますが、1年未満にはく離が生じるとは考えにくいレベルでした。
 
このような場合、鉄則は「上流をさがせ」です。塗装する前の、脱脂や前処理工程が疑われます。塗装する前の鋼材の表面には、加工時に使用された油や保管時の錆を防ぐための防錆油などが付着している場合が多くあります。この表面の油分などを除去するのが脱脂と言われる工程です。そして、表面に錆や溶接あるいはレーザー切断などで生じる酸化皮膜などがある場合、これを除去する酸洗いという工程を経ます。さらに塗装との密着を長期にわたって確保するための化成皮膜を表面に形成させます。この脱脂~化成皮膜の工程の品質不良が疑われます。
 
そこで、現物の塗装品のサンプルを電子顕微鏡で観察することにしました。はく離した塗装面のすぐ横の塗膜を強制的に剥がしてみました。電子顕微鏡で観察すると、下図の『枝状錆』がはっきりと観察されました。

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無数の糸がからまりながら広がったような模様が見えました。この枝状錆は深刻です。鋼材と塗膜との密着が悪い場合に、塗膜の下で広がります。そしてやがて塗膜ははく離します。すでに、この枝状錆が製品の何か所かで広がっているものと予想されます。
 
そこで、今度は外注工場の「前処理工程」で、試験用標準鋼材を実際に処理して、それを気化防錆袋に入れ、持ってきていただきました。その表面を観察すると、化成皮膜(この場合はリン酸亜皮膜)の結晶が貧弱であることがわかりました。検出されるはずの亜鉛が見当たりません。おそらく、リン酸亜鉛処理工程の液管理が不十分なのでしょう。

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今回は、珍しく僕が活動している業界の少し専門的なお話をご紹介しました。しかし、このようなことは多くの業界でも生じているのではないかと思いお話をしました。

  • 原因は問題が生じた場所にあるとは限らない。むしろ時間的にあるいは生産の流れ的に、前の方にあることが多い。問題と原因には時間的にあるいは空間的にズレがある。
  • 仕事は自分の内側(社内)ばかりでなく、外側(外注など)も含めて監視・指導をしていく必要がある。お互いに成長していく仕組みが必要かもしれません。

こうして考えてみると、やっぱり、業界を超えて必要なことかもしれませんね。それはそれでたいへんですけど…