リーダーシップについて学ぶ その1

– 働くために会社に来てはいけない –

20170527-1

予感めいたものがありました。
何千年と続いた「情報を制する者が権力を持つ」という社会の成り立ちが、根底から崩れています。インターネットの登場で、情報格差がなくなり、組織はフラット化しています。記憶の蓄積はもはや脳が担うものではなく、ストレージという「人体の外」が中心になりました。先日、会計士の先生とお話をしていたら、会計ソフトにもクラウド化とともにAIが取り入れられ始めていて、近い将来に今ある経理の仕事は無くなりそうだということでした。定型化が可能な判断業務もどんどん「人の外」に置かれようとしています。
フラット化する社会の中で、予感めいたもの…それは危機感にも近いものですが、会社の成り立ちも変化しているはずだという思いが、僕の中で「ささやき」から「警告」になってきました。そんな折に、グローバルリーダーシップを学ぶセミナーがあったので、思い切って会社全体で受講することにしました。
 
セッションの講師は、ビル・ゲイツの奥さんであるミリンダ・ゲイツ、リッツカールトンホテルの創業者であるホルスト・シュルツ、世界の政治家や経営者にリーダーシップとコーチングのあり方を説いているジョン・マックウェル、そしてグローバルリーダーシップを説くために世界120か国に機関を設立しているビル・ハイベルズの4人でした。ビル・ハイベルズ以外はビデオによる講演です。
 
ミリンダ・ゲイツのお話は、利益には責任が伴う、大きな資産には大きな責任が伴うというのが骨子でした。総資産10兆円に伴う責任というものがどのようなものであるかは、僕の想像の範囲を超えていますが、これほどまでに「貢献」や「還元」に心を砕かなくてはならないのかという驚きがありました。お金持ちになることは、それはそれでたいへんなこと…もしかしたら、そういう心があるからお金が集まるのかもしれませんね。
 
さて、二人目のホルスト・シュルツの話は、ドイツなまりの英語が強烈でしたが、示唆とウイットに富むものでした。サービスの要素は、期待、タイムリー、気持ちよく受け取っていただく…3要素から成り、良いサービスとは、要素とかぶりますが、①完璧さ、②タイムリー、③心遣い、の3つのポイントから考える必要があるとのこと。サービスの印象は最初の10秒で決まり、お客様のニーズを把握してそれに応えるだけではダメで、その神髄は、満足を継続し満足を信頼に進化させることにあると彼は言います。ともすれば、目の前の課題に応えることに精いっぱいで、1つ解決すると安心して、その継続を忘れがちになる僕には耳の痛い指摘です。解決してほっとしたときに、「まだ問題は残っていないか」を考えるためには、とてもタフでなくてはなりませんね。でもそれが真髄なのです。
 
彼のホテルグループでは、上層部からアルバイトの末端に至るまで、一人一人に「働くために会社に来てはいけない。エクセレント(卓越したもの)を生み出すために会社に来なさい」を徹底しているそうです。「仕事はちゃんとこなしている」という視点は、すでに社員の価値にはならない時代になったというのが彼の見識です。あなたがVIPなのではなく、あなたの仕事がVIPなのであり、社員には目的意識と所属意識をしっかり持つことを明確に求めているそうです。「リーダーには言い訳する権利はない」という彼の言は、リーダーは、権威を表すものではなく、見識を表わすものだということを意味していました。
製造や教育も含めて、すべてのことがサービス化していく中で、リーダーの役割はとても重要で、リーダーなしにはどんな社会の単位も成り立たないことがわかります。