やさしくあることのむずかしさ その続き

少子化の中で仲良くする相手を選択できない環境の中で身につけてきた「心の自主規制」あるいは「無難な自己防衛」という術は、稀有な存在にならなければ生き残れない今日の企業においては弊害となります。人の話をよく聞くことと、人に合せることは同じ次元ではないですし、賛成を得ることと、賛成が得られそうな意見を選んで言うことは同じ次元ではありません。企業は理念と言う1つの方向を目指す集団ではありますが、理念の実現はたやすいことではありません。多様な意見が交わされてこそ、見えてくるものです。こわいのは、掘り下げて考えるべきことの視線をそらし、きれいごとで済ませて正当化してしまうクセです。稲盛和夫さんは、仕事や人生の結果は「考え方×熱意×能力」であると言われています。考え方の軌道修正を常にし合えるチームワークを作りださない限り、努力や熱意だけが言い訳の集団になってしまいそうです。会社は常に「現状維持」と「きれいごと」と戦い続けるものであるという覚悟が必要です。
 
心の自主規制から生まれるやさしさは、岩を穿つことはなく、どこに注ぎ込むこともなく、無難と言う砂の中に消えていきます。心の守備範囲はどうしても狭くなり浅くなりがちです。しかし、会社は無難さを求める場所ではありません。会社は稀有な存在にならない限り生き残れないのです。稀有な意見やアイデアを燃料にして前に進んでいます。しかし、これは個人の人生においてもきっと同じです。並大抵のことでは「良い人生」は送れないはずです。
 
 
厳しいことを言うようですが、心の自主規制による「やさしさ」は結局自分を守る手段にすぎないのだろうと思います。本当のやさしさは、出発点が「相手側で思う」あるいは「普遍的な視点に立つ」であるはずです。まったく源流が違うのです。会社も意味のある人生も必要としているのは、後者の側にあるやさしさです。だからこそ、相手に厳しいことも言うでしょうし、耳に逆らうことも言うのです。「相手に嫌われるかどうかは二の次」となれるはずです。チームプレーを生み出すメンバー間を結びつけるやさしさがそのようなものに立脚するものでなければ良い仕事はできないはずです。会社の大きな目的・存在意義は「人を育てる」ことです。ただ現状を認め合い傷をなめあうような仲の良さは、その会社の存在意義に決してなじむものではありません。月が欠けるように心が傷ついても、地球を回るというミッションを守ることでまた満つる月のように、厳しさと普遍性の中から生まれる光こそが世の中をやさしくするのだと思います。
 
「良いことと心が信じてしまっているもの」や「安易さ」から脱却していくために会社はどう接し、どう機会を作りだしていくべきか…会社の重要なテーマだと思います。
 

MOON FACTORYという名のカフェと月食

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