すべての人の心の中にあるそれぞれの宝物のために

ささやかではありますが、障がい児の自立のための活動の支援をさせていただいています。その子供たちのアート展が代官山で催されました。そのオープニングパーティの挨拶をさせていただきました。今回はそのあいさつ文をご紹介したいと思います。

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昨日は半日、オランダから来られたゲストといっしょにすごしました。
彼が最初に日本に来たのは今から6年前です。浜離宮を案内しました。茶室があって、抹茶をたててくださるので、静かな瞑想にも似た時間を過ごすことができました。
あれから6年、今回で3回目の来日ですが、その間に結婚され、新居も構えました。20平米くらいの庭もあって、庭造りは自分で全部やったそうです。写真を見てびっくりしました。まるで浜離宮の超ミニチュア版みたいな感じだったからです。
夜はしゃぶしゃぶを食べました。こんなおいしいビーフははじめて食べたと感動されていました。彼の家の近くには「しゃぶしゃぶ」という名の日本食のレストランがあって、中国人が経営していて、すしとしゃぶしゃぶを食べさせるそうです。ところがそのしゃぶしゃぶはこれとはまったく違う…と言います。どこがどんな風に違うのか、彼の説明を聞いてもどうにも絵が浮かんできません。どんな摩訶不思議なしゃぶしゃぶなのか…ちょっと怖いもの見たさ…に似た誘惑を感じています。
今朝になって、オランダ、絵というキーワードのせいでしょうか、一人の画家のことを思い出しました。ビンセントバンゴッホです。1986年、ニューヨークのマンハッタン島のダウンタウンにはまだワールドトレードセンターが2つ並んで建っていたころの話です。僕はメトロポリタン美術館で、1枚の絵の前で釘付けになっていました。それまでの僕はモネやセザンヌといった印象派の絵が好きでした。しかし、僕が釘付けになったのは、意外にもゴッホの自画像だったんです。
20160529-2私たちは、みな心の中に何事にも代えがたい宝物をもって生まれてきています。でもその宝物の箱はなかなか開けられない。そして、自分が宝物を持っていることにさえ疑問を持ったりします。でもそんなことは決してありません。ここにいるすべての人は、必ず心の中にその人だけの、唯一無二の宝物を持っています。
生きるということは、その宝物をさがす冒険のようなものです。そして、その宝物が見つかったときに、人はどれほど輝くものを生み出すのかをゴッホは教えてくれました。
しかし、一方で生きるためにはもう1つ必要なものがあることを、ゴッホは僕に教えてくれました。
彼は南フランスのアルルという地で、ゴーギャンとの友情を求め、そして挫折していきます。
 
自分の中にある宝物のありかをみつけることは本当に幸いなことです。でもその宝物が宝物として輝くためには、人とのつながりが不可欠です。宝物は2つのものを栄養して輝くようです。それは、愛と感謝です。ゴッホは感謝の心を表すことについては絵ほどには才能を持たなかったのかもしれません。
 
20160529-3今回の展示会にあたって、そのシンボルとして2つの絵が候補になりました。黄色い太陽が輝く絵です。ゴッホが使う黄色のようです。まさしく自分の宝物を知る人の絵です。
でも、坂上さんも僕も、こちらの絵を選びました。20160529-4
2回目のアート展に当たって、ほとばしる才能ではなく、包み込むような愛を選びました。

 
 
この展示会は、決して僕の力で開催されたものではありません。
僕がよく行く三軒茶屋のレストラン、BUENOのオーナーである山口さんに、勝俣さんを紹介され、そしてこのカフェを知りました。
会社のいろいろな販促資料のデザインをお願いしている坂上さんを通じて、からふるの活動を知り、みなさんと出会い、そして知之君をはじめ子供たちのすばらしい絵に接することができました。
僕の右手につながっている人のつながりと、僕の左手につながっている人のつながりが、たまたま僕を介してつながりました。アート展の開催に貢献したものをあげなさいと言われたら、それはみなさんの中にある、世界にひとつの宝物の力です。
 
宝物と愛が触れたとき、宝物と宝物が感謝で結ばれたとき、ぼくらはどんなにすてきな気持ちになれるのか? そしてその輪をもっともっと広げていくことができれば、その願いが…坂上さんと僕が、この絵を選んだ理由です。
きっとゴッホもこの絵を気に入ってくれるはずです。
 
みなさんの中の世界にひとつの宝物に感謝します。
お越しいただきありがとうございます。

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