僕は猫がきらいだ

正確に言うと、近所のあの猫のばあさんがきらいだ
僕がねぐらにしていた大きな木からほど近い
中が空洞になった倒れた木の上で彼女は決まって日向ぼっこをしていた
 
いつだったか、僕が自分のさびしさについて話すと、彼女はこう答えた
「おまえさんが本当の孤独を知っているってどうやって証明して見せてくれるんだい?」
あるとき、僕のことを無視するやつがいるんだって言うと、彼女はこう答えた
「そいつがおまえさんの存在を認める立場にあるって誰が決めたんだい?」
この間の月がきれいな夜に、僕が自分が生きる意味がわからなくなったって言ったら、彼女はこう答えた
「そもそも生きることに意味が必要だってどうして思えるんだい?」
 
こんな皮肉に満ちた受け答えをするやつは犬には決していないさ
もうちっとは優しさっていうものがある
あの態度も僕の気に障る
めんどうくさそうに、まるで答える気なんかないってふうで皮肉なことをぼそっと言う
そして、何よりそのばあさんが嫌いなのは
肝心なときに彼女の言ったことが僕の脳裏をよぎること
 
つい最近もこんなことがあった
あんまり皮肉なことを言うから、僕が「あんたはいったい何者なんだ?」って言ったら
「あたしはおまえさんの鏡さ」
その答えを聞いた時からずっと頭の中の奥の方が痛いままだ
 
どれだけ僕がそのばあさんが嫌いなのか分かってもらえるだろうか
きっとわかってもらえないに違いない
だからときどき僕はどれだけそのばあさんが嫌いなのかを確かめるために
相談ごとを抱えて彼女に会いに行くことにしているんだ
 

forTop