東の大きな木のところにもそれはなかった
西の緑色の池のところにもそれはなかった
どうやっても見つからない
何をやっても思い出せない
そもそも僕は何を懸命に探しているのかを
でも、じっとしていると
あのおそろしいやつが僕が見つけてしまう
だから僕は懸命に走り続けなくてちゃならない
そいつに追いつかれる前に
本当のことを言うと、僕はそいつの本当の姿を知らない
一度だけ、その輪郭のようなものを見たことがある
そのときは目をつぶったままただ走って逃げた
あいつの目を覗き込んだら、僕自身が消えてしまいそうな気がしたから
今日も疲れ果てて、僕はねぐらにもどってきた
何をやってもうまくいかない
そんな思いでいっぱいの夜は
頭を2つの前足の間に沈めて月をただ眺めながら眠気が訪れるのを待つ
僕は月に訊く
僕はこの運命を呪ったらいいのか、それとも…
あなたはなぜ今夜も黙って見ているだけなのか
どうしたら、僕の願いを聞いてもらえるのか
いやそうじゃない…
僕は何を願うべきなのか…
ありとあらゆる質問をし
ありとあらゆる願い事をした
でも、月は決まってそこにあるだけだった
ところが今夜の僕の頭はいつもとは違う回路を選んだようだ
そう僕は1つだけ、訊いたことがない質問があることに気づいた
それは願い事と言った方が正しいのかもしれないのだけれど・・・
今までにしたことのない問いかけ・・・
あなたの願いは何なのですか?