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Vol.09-10 連載企画:あわてず、あせらず、あきらめず 2009年10月号

第9回 : 「21世紀の歴史」 その後編

ある晩に夢の中に出てきた松下幸之助。その夢の中で、経営の神様より「原点に返り、正しいことを進めることですわ。」と諭された私は、「原点・本質とは何か?」を急がば回れの精神で勉強することにしました。

今回はその9回目です。前回に引き続きジャック・アタリ著『21世紀の歴史』(作品社より2008年8月に刊)を取り上げます。歴史と地球規模という2つの軸により、今起きていることの本質とこれから起きることの姿を解き明かそうとした壮大な本ですので、ここで触れることができるのは、エッセンスのごく一部に過ぎません。同氏が語るさまざまなキーワード・用語を正しくお伝えすることはとてもできそうもありません。ぜひ直接本を手にとってお読みいただければと思います。

資本主義の歴史を中心都市の変遷から見ると

心都市の変遷とその背景をみると、市場民主主義がどのような変化を遂げてきたかがわかります。1620〜1788年にアムステルダムは洗練された船(量産が可能で乗組員を1/5に削減できる新型船)の製造技術を背景に世界の中心となりました。1788〜1890年にロンドンは蒸気機関の利用により綿紡績の生産性を10倍に向上させ、世界の中心となりました。蒸気機関を発明したのはフランス人でしたが、当時森林資源が豊富であったことなどによりあまり重要視されず、結局英国のJ.ワットが特許権を取得しています。ここから、『技術を発明したのが誰であるかはあまり重要ではなく、文化的・政治的にこれを活用できる状態にあることが重要である』という教訓が得られると筆者は記しています。『金融の中心地としての破たんは、同時に世界の中心都市としての役割の終焉を意味する』という法則はロンドンでも例外ではありませんでした。1890〜1929年にボストンは石油をエネルギー源とする内燃機関とそこから誕生した自動車を背景に世界の中心都市になりました。内燃機関の登場で移動時間は短くなり世界は小さくなりました。1929〜1980年にニューヨークは電気ネットワークとそれを動力とする製品(モーターやエレベーターなど)を背景に世界の中心となりました。1980年からロサンジェルスがコンピュータの大量生産を背景に世界の中心になり今日に至っています。この新しいテクノロジーは市場のメカニズムが支配する領域を拡大しました。


東京には中心都市になる覚悟があるか?

史的にみて中心都市は常に東に移動してきました。多極化は新たな中心都市を求めています。太平洋を越えて東京が候補になるのか、それとも東京を飛び越えて上海などに移るのか。ハブ空港、ハブ港、市場の透明性や移民の受け入れなど、東京にはまだまだタブーが多いので難しいのかもしれません。
近未来の特徴は、社会的不安定が増大しながら、さまざまな相互依存が急速に高まっていくことにありますが、その結果として種々の出来事(紛争、新アイデア、技術進歩、テロ、科学的発見など)が、世界全体に波及する可能性が生まれます。言い換えれば、それらの出来事が、アイデア・商品・資本・人の自由な移動に影響を及ぼします。「中心都市」では、クリエーター層のプロジェクトに対して、果敢に投資する金融機関を創出する能力が求められます。
一方で経済成長は民主主義の領域を拡大してきました。歴史上いかなる強権政治も、継続的な経済的繁栄を求めざるを得ません。中産階級のコントロールを維持するためには力強い経済成長が欠かせないことが明らかだからです。いまだに市場民主主義化されていない大部分の国でもいずれは市場民主主義化されます。多極化が新たな中心都市を求めていることは間違いありませんが、これまでと異なるメカニズムが働きそうです。


時間の商品化

業の産業化に伴い農民は都市部に労働者として送り込まれます。資本や商品がさらに国境を超えて行き来することで、世界中の産業はますますグローバル化していきます。工場は総労働コストの安い地域に移転し、技術革新のペースも加速します。企業経営者は短期的な指標で評価されがちになります。企業はイノベーション競争にさらされ、そこで働く従業員は知識の獲得競争にさらされることになります。労働、消費、運輸、娯楽、教育の境界は希薄になり、消費者の利益は労働者の利益を超えるようになります。従業員の企業への帰属意識も希薄化します。
都会人はさらに狭いアパートに閉じ込められ、都会の生活を孤独なものにしていき、個人、自主性、個人主義の賛美は利己主義を助長する温床ともなります。都会人は観光により静寂と孤独を探求するようになり、瞑想や何もすることがなく過ごせるといったサービスを提供する観光地が出現します。
一方で、交通に費やす時間は増大し、交通機関は生活の場と化していくことになります。移動中の労働、娯楽、ショッピングが広がります。人口100万超の都市は高速鉄道で結ばれ、年間20億人が飛行機で移動することになります。1000万人以上の人類が常に機上の人となります。就労可能性を持ち続けるためには、旅行者としての資質(移動時間を活用でき、どこに行っても円滑に仕事ができる能力)を備えていることが重要になってきます。


世界最大の産業となる保険業と娯楽産業

スクを回避する合理的な方法で、国家の社会保障の補完的な役割を担うのが保険業です。保険業は世界最大の産業となると思われます。今後は保険がさらに国家の役割を担っていくことになります。
もちろん治安や医療も例外ではありません。警察による「戸締りの指導」より保険会社による「安全対策がAランクでないと盗難保険が高価になりますよ」とか、国が「メタボ防止に努めましょう」と宣伝するより保険会社に「メタボだと生命保険が高くなりますよ」と言われた方が効果的であるかもしれません。喫煙や年間の運転走行距離など、保険がすでに個人の生活パターンを規定する例は増えています。今後はますますこの傾向が強くなりそうです。
誰もが不安定な現実から逃避するために娯楽を求めます。娯楽もまた世界最大の産業となります。すべての企業と国家は、世の中の不安から守ってほしいという要求と、世の中の不安から解放されたいという要求の周辺に組織されることになりそうです。乗り物や家電製品が通信でつながり、ユビキタス・ノマド(携帯型の機器=通信および娯楽機器)はそれ以前に産業化されていたサービス全般に行きわたります。一方で、建物、機械、製品あるいは人間にさえタグとセンサーにより遠隔監視ができるようになり、2030年ころまでに超監視型社会を形成すると予想されます。
商店街、ビルや道路などに設置された監視カメラは、常に私たちの行動を画像として保存しています。顔認識などの技術の向上により、私たちの行動は瞬時に把握されることになりそうです。安全とプライバシーの葛藤は、ますます悩ましい問題になりそうです。保険と監視が一対となり国の機能を補完していくというシナリオが現実味を帯びてきたようにも思えます。


都市の変貌

口移動が最も激しいのは、途上国内における農村部から都市部への移動です。1950年に100万人以上の都市は世界で80でしたが、2015年には550都市になると予想されます。1000万人以上の都市も現在の16から24都市に増加します。増加する都市のほとんどは途上国にあります。2007年、世界の人口の約半分がすでに都市部で生活しています。今後の人口増大に備え都市部はインフラを3〜4倍に増やさなければならないのですが、実際には困難です。大都市の大部分は、住宅、ごみ収集や下水処理が追い付かず、警察や病院も不足することになります(ここにも保険業が行政機能を補完していくことになる素地が見受けられます)。
また一方で国境を超えた人口の移動=移民が増えます。後進国から先進国への移民も増え、まもなく年間1000万人超に到達します。職業上の理由から移民する彼らは、経済的・金銭的・産業的・文化的担い手として活躍することになります。今後25年のうちに毎年約5000万人が祖国を離れて生活すると予想されます。10億人近くの個人が自分の出生国と異なるあるいは両親の出生国と異なる場所で生活することになります。


地球環境

ネルギー不足が感じられる前に農産物や森林資源の枯渇など他の希少性が問題になりそうです。2050年までに人類全体を養うために農業生産高を2倍に引き上げなくてはなりません。しかし、都市化の進展により、毎年500万ヘクタールの農地が消失しています。また、植物が光合成できる総量の約半分を人類は消費しています。十分な農産物を確保するためには、遺伝子組み換え技術の利用が前提となりそうですが、いまだに安全性の保証はありません。
森林資源は18世紀以来ヨーロッパに相当する森林が消失しました。現在1時間ごとにサッカー場7つ分に相当する面積が消失し続けています。森林資源破壊の責任の3分の1は、南洋材の世界第1位の輸入国である日本にあるようです。
産業活動により大気中に放出されるガスも脅威です。年間70億トンの二酸化炭素が大気中に放出されています。最も深刻なシナリオでは2050年までに地球の気温は2℃上昇し、2100年までに5℃上昇すると予想されています。自然災害により膨大な金融的な被害が生じることになります。樹木の生長は早まりますが、一方でひ弱になり、コナラが増えブナが減少します。プランクトンは北に移動し、これを求めて魚も移動します。これを捕食していた海鳥は絶滅すると思われます。
世界の大都市上位10のうち7都市には港があり、人口の3分の1は沿岸地域に暮らしています。水位の上昇により多くの沿岸地域で人類は生活できなくなりそうです。アフリカの砂漠は毎年ベルギー国土と同じ面積だけ拡大しています。20億人が砂漠化の危機にある地域で暮らすことになります。環境移民の数は2050年までに10倍になると予想されています。
人類はすでに自然淡水源の80%を消費しています。1900年には1人当たり1万5000立方メートルあった飲み水が現在では8000立法メートルに減少しています。15億人以上の人が飲み水の確保に支障があり、35億人がきれいな水にありつけません。汚染された水により毎日1万5000人が命を落としています。


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