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Vol.09-08 連載企画:あわてず、あせらず、あきらめず 2009年8月号

第7回 : 「私たちの経済は感情や思いグセに翻弄されている?」 その後編

ある晩に夢の中に出てきた松下幸之助。その夢の中で、経営の神様より「原点に返り、正しいことを進めることですわ。」と諭された私は、「原点・本質とは何か?」を急がば回れの精神で勉強することにしました。

今回はその7回目です。取り上げるのは前回に引き続きマッテオ・モッテルリーニ著『経済は感情で動く』(紀伊国屋書店刊)です。
私たちはこれまで、消費者は大きな全体としてみると合理的な判断をし、需要曲線と供給曲線の交点で価格は決まり、ある商品から得られる満足度=限界効用はしだいに減っていく…それは自明のこととしてきました。しかし、それだけでは説明できないことが増えているように思えます。マーケティングの効果を上げるため、自らが賢い買い手になるため、非合理な経営判断をする思いグセや思考のパターンに気づくため、「感情経済」の側面がたいへん重要になっています。
ここで触れることができるのは、エッセンスのごく一部ですので、ぜひ本を手にとってお読みいただければと思います。

コンコルドの誤謬(ごびゅう)

ランスが開発した超音速旅客機=コンコルドから名付けられたもので、過去の投資額の大きさがこれからの投資の方向を左右してしまうということを指します。次のAとBのケースで具体的に見てみましょう。A:調査の結果いまから2億円を投資して商品化しても、同じ規模の競合他社がすでに商品化しており性能・価格面で劣るとわかりました。さて商品の開発を進めますか?という問いに対して、ほとんどの人が「ノー」と答えました。では、Bです。10億円の投資計画のうち、すでに8億円を費やしあと2億円で商品化できるところまでこぎつけました。ところがここで他社が先行して商品を発売しそれは自社が商品化するものより価格・性能面とも優れていることが判明した。あなたは残りの2億円の投資を続けますか?という問いに対しては85%の人が「イエス」と回答しています。どちらも今から2億円を費やすかどうかの判断が求められたわけですが、答えは正反対になりました。「損失回避」の心理が正しい判断を妨げた例です。このような事例は公共投資ばかりでなく、管理職が重要な局面で最も陥りやすい心理かもしれませんね。


いかり効果(アンカリング効果)

初に印象に残った数字やモノがその後の判断に影響を及ぼすことを指しています。たとえば、5000円の予算だったのに、1万円という値札が消されて7000円になっているのを見て、「安い」と感じてつい買ってしまった…とか、4480円の靴より5000円の値札が消されていて4480円になっている靴の方を選ぶ…といった例です。デパートのセール売り場では毎度繰り返されている光景かもしれませんね。

考の近道による判断のかたよりも私たちはよく体験しているようです。人は判断を下す際に、確率や合理的な論理によって分析するより、しばしば大雑把に直感的にすばやく判断を下そうとします。往々にしてその方が楽だからです。一見してでたらめに見えるかたよりですが、実は一定の傾向を持っていて「予測可能」であるかもしれません。以下にその例を考えてみましょう。


思考の近道 ステレオタイプと利用可能性

がねをかけ、気弱そうで、歴史の本が好きだという人の職業は「図書館員」であると思いますか?それとも「商店主」であると思いますか?という問いに対して、多くの人が「図書館員」と答えました。しかし、実際には社会では図書館員である人より商店主である人の方がはるかに多いのです。にもかかわらず、図書館員であると答える人が多かったのです。このように典型性を基に判断すると、実際にはそうでないものがそうであるように見えてくる傾向があります。私たちもついつい人やものごとにまずレッテルを貼り、そのレッテルごとに決められているパターンによって判断しがちですね。

る出来事が起こる確率の判断は、それが頭に入りやすいかどうかに左右されがちです。たとえばテレビやマスコミで連日大きく取り上げられると、実際の確率より高く評価し、すぐに自分にも降りかかってくると思ってしまう傾向があります。鳥インフルエンザが報道されれば鶏肉を食べなくなったり、飛行機事故があると飛行機に乗らなくなったりしがちですが、実際には飛行機事故より日々の車の運転による事故の方がはるかに確率は高く、より運転時の事故防止に気を配る方が身を守るすべとしてははるかに現実的です。


思考の近道 小数の法則と平均値への回帰

数の法則=少ない数のサンプルで法則を決めようとすることを言いますが、具体的な例で見てみましょう。コインを投げて裏が出るか表が出るか当てるゲームをしたとします。4回連続表が出た後で、多くの人は裏とコールします。しかし、実際には5回目に表が出る確率も裏が出る確率も50%です。膨大に回数を重ねればたしかに裏と表が出る確率はほぼ50%になるでしょう。この大数の法則を無理やり小数の法則にあてはめようとします。私たちは統計的サンプルが少なくて正しい判断が不可能な場合でもとにかく一般化しようとする傾向を持つようです。

ポーツ・イラストレーテッドの呪いという言葉があります。この有名な雑誌の表紙を飾ると決まって翌年は不振に終わるというジンクスが存在するというものです。しかし、実際にはこの表紙に載るのは、例外中の例外の成績を収めた選手ばかりで、そのあとに平均に近い成績が出ても不思議ではないのです。
さて、今回で終了しようと思っていた「感情経済」の勉強ですが、少なからず反響をいただきました。「後悔回避」「都合のよい面ばかり見たがる」心理など、ビジネス上の判断をする際に妨げになる「思いグセ」についてさらにもう1回みなさんと勉強してみたいと思います。夏の疲れが出やすい時期です。どうぞ体調管理に気をつけて、感情経済の最終回=第3回でまたお会いしましょう。


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