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Vol.09-05 連載企画:あわてず、あせらず、あきらめず 2009年5月号

第4回 : 「不況に対する抵抗力をつける」について考える その前編

ある晩に夢の中に出てきた松下幸之助。その夢の中で、経営の神様より「原点に返り、正しいことを進めることですわ。」と諭された私は、「原点・本質とは何か?」を急がば回れの精神で勉強することにしました。今回はその第4回目です。よろしかったら、ごいっしょにいかがですか?

「忘れないでほしい、マジックはあなたから始まることを」

ィズニー・インスティチュート著『お客様を感動させる最高の方法』(日本経済新聞出版社刊)の冒頭の言葉です。『新規顧客の開拓』ばかりでは経営はなかなか安定しません。基本は『既存顧客の深耕』にあるように思います。多くの企業がお客様との距離を近くし、あらゆる仕事がサービス化、言い換えればソフト化する中で、有効な『既存顧客の深耕』策とは何でしょうか。ポイントによる値引きでリピート率を上げる手法もありますが、もっと本質的なものがあるように思えます。

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986年に、ディズニーの人材研修期間としてディズニー・インスティチュートは設立されました。現在では世界35カ国40業種以上の企業に、リーダーシップや人材管理、クオリティー・サービスなど多くの研修プログラムを提供しています。脅威のリピート率を誇るディズニーにはマジックがあると言われます。経営幹部もバランスシートに決して載ることのないマジックをきわめて貴重な資産であると考えています。本書でも「どんな業種にもマジックは必要」と述べています。しかし、そこにあるマジックは摩訶不思議な手品などではなく、日々継続される従業員の能力開発と周到な準備によるものでした。マジックが奇跡を起こすのではなく、「従業員がマジックを生む。」これがディズニーの基本的な思想です。先述の「値引き」を超えた本質的なものがここにあるように思えます。ディズニーのマジックをひも解くことで、不況に負けない会社となるための王道をみなさんとさぐってみたいと思います。

ニーズとウォンツ

オリティー・サービス・サイクルは主に、@サービステーマ、Aサービス基準、Bサービスの伝達、Cサービスの統合、の4つの要素から成り立っていて、それはお客様を中心とした途切れることのないループだとディズニーは定義しています。

ディズニーはお客様を知り理解する技術と科学を「ゲストロジー」と呼んでいますが、それにより、ゲスト自身とゲストの@ニーズ(要求)、Aウォンツ(欲求)、Bステレオタイプ(先入観)、Cエモーション(感情)を把握します。ゲストロジーにより得られた情報がサイクルを動かし、新たな情報によりサイクルの微調整が図られます。このサイクルの軸となるのはサービステーマで、従業員全員がテーマを共有します。

ーマ実現のための行動指針・質の計測手段となるのがサービス基準です。例えばディズニー・ワールドでのサービス基準は、4要素からなり、重要度の高い方から「安全」「ゲストへの配慮」「ショー」「効率」と定められており、キャストはこれに従ってパーク内で行動し、種々の決定を行なっています。

8mおきに置かれたごみ箱

ービステーマをゲストに伝えるための伝達システムについて、ディズニーではすべての企業が利用できるものに3つあると説いています。キャスト(従業員)、セット(お客様と出会うところのすべて=お店、ウェブサイト、電話など)、プロセスの3つで、それぞれにマジックを追求しています。例えばセットのマジックの例をご紹介しましょう。ディズニーランドでは違うエリアに入るときに舗装の質感を変えています。それは「世界が変わったことを、靴の底から感じられるように」とのウォルト(・ディズニー)のアイデアから生まれたものです。ドアノブから食堂まであらゆるものがメッセージを送っているという徹底的に細部にまでこだわる発想があり、そのすべてにサービス基準を満たすことを求めています。例えばごみ箱は約8mおきに置かれています。一般的な人がごみを捨てずに持ち歩く距離の限界からテーマパークの設計者が算出したものです。

ロセスとは、ディズニー・ワールドで言えば、ゲストの誘導、ホテルのチェックイン、また急病や火事への対応などがありますが、「すべてのプロセスには発火点が存在する」と言っています。発火点とは、どんなに調整してもプロセスがうまく機能しなくなることを言います。ディズニーの施設で言えば、収容人数の限界に近づき、ゲストにとって楽しいはずの1日が不愉快なものに変わり始める瞬間を意味します。ここで、本著は印象的な示唆を与えています。「発火点を完全に取り除くことはできない。目指すのは、発火点が爆発点にならないようにすることである。」

ランプの灯り

ィズニーランド入口のアーチ状のトンネルを抜けたところ、シティーホールの隣に消防署があります。タウンスクエアを見渡すように建てられたその建物の2階の窓にランプの炎が見えます。その灯りはウォルトに捧げられたものだそうです。米国ディズニーランドの建設と開園当初の業務を監督するために、彼はここをアパートとして使っていたそうです。その窓からウォルトは、ランドを訪れたゲストを観察していました。

営管理のために建物を作ろうという意見が出たときウォルトは断固反対したそうです。「わたしは君たちに机にかじりついてばかりいてほしくないんだ。パーク内を歩き、お客様がしていることを観察し、この場所をどうしたらもっと楽しくできるかを考えてほしい。」と言ったそうです。なぜ、これほどまでに現場を重視し、お客様の声に耳を澄まし、細部まで神経を行き届かせようとしたのか。その理由はウォルト自身の今もまさに進行形で意味を持つ次の言葉から理解できるかもしれません。「浮き沈みの激しいわたしたちの業界では、過去の栄光に固執することも、いま手にしている名誉に酔うことも許されない。時代も私たちを取り巻く環境もめまぐるしく変化する。だからこそ常に将来に向けて目標を設定しつづけなければならない。」次回は、ディズニーが駆使しているゲストロジーを中心にもう少し掘り下げてみたいと思います。後編でまたお会いしましょう。

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