神様の心を動かすために

北京で3泊して、一人ローカルの格安航空会社を使って上海に移動しました。
北京から上海までの移動は2時間10分ほど。新幹線を使っても5時間です。約1300km、中国は広いです。
 
北京のローカル空港である南苑空港は本当にシンプルな空港です。長蛇の列に並んで搭乗券をもらい、バスターミナルでみかけるような広い待合ホールでぼけーっと待ちます。片側の壁際には、ゲートナンバーが書いてあり、自分のゲートが開くと、そこから目的の飛行機の下まで自分で歩いていき、タラップを上がって搭乗します。半券の切り取りが2つあるのは、1つめはゲートで、2つめは飛行機に乗り込むときに切り取られます。乗る飛行機を間違えたらたいへんですから。
 
北京での快適なホテル暮らしは終わり、次の目的地では寮生活です。上海は巨大な都市です。人口は1400万人を超える世界第2位、東西・南北が100kmくらいの巨大な都市です。空港から上海を抜け出すのに1時間くらいかかってしまいます。上海の隣の常熟市が次の目的地ですが、空港から約200kmあります。
 
缶詰め状態で実験を繰り返すため、協業を進めている会社の最上階のゲストルームが僕のねぐらになります。まあ、アパートの一室といった感じです。もちろんTVはありません。4畳半くらいの部屋にベッドがどんと置いてあって、あとは窓際に長いテーブルがあります。もともとあったエアコンは壊れてしまっていて、急きょ取り付けてくれたエアコンはテーブルでPCを打っている僕を直接横からあたためてくれます。たしかに暖かいですが体がからからに乾きそうです。1つのリモコンでどういうわけか2つとも起動してしまいます。「壊れてしまっている方は起動しないように」と言われているのですが、なかなか難しい技が求められます。夜中に寒くてエアコンを起動しようと思ってピッとやったら、両方とも起動してしまい、夜中に異音でびっくりする羽目になりました。
 
日本のコンセントやテーブルタップは本当に優秀です。コンセントをつないで、ケーブルを伸ばして、デスクの上のPCを起動して…よく見るとプラグが抜けている…あるいは、いまにも抜けそうに半分くらい浮き上がっている…プラグを差し込みなおしてデスクに戻ると…こんな喜劇のひとこまのような動作を繰り返さなくてはならないことも日常茶飯事です。便利なテーブルタップも多用されていますが、ゆるゆるですぐ抜けてしまうものも少なくありません。
 
部屋はバストイレ付のアパートの1室としては悪くないですが、やはりバスルームがとても寒いのと、お湯の出が悪いのが難点です。少々大袈裟ですが、修行僧が滝にうたれる…そんな覚悟をもってシャワーを浴びることになります。用意していただいたシャンプーは、欧米の高級シャンプーのような容器に入ってはいますが、中からは妙にゼリーっぽいぷるんとしたものが出てくるので、日本から持参したトラベル用のシャンプーを大事に使うことにしました。残念ながら、人一倍、髪は貴重なものですから、あまり冒険はしたくありません。
 
実験現場となる現場工場は滞在している会社から車で15分ほどです。去年ここにはじめてきたときには、工事中だった外環高速があっというまに完成して使えるようになったので30分以上かかった距離が今は15分になりました。高速と言っても無料です。日本の感覚だと開通まであと2~3年かなと思っていたのですが、それから半年で開通しました。
 
朝から夕方までは工場で現場実験をして、その結果を踏まえて、滞在する会社の研究棟で再現試験やら改善試験やらの試行錯誤をします。というわけで連日深夜にまでになりますが、幸か不幸か、テレビもないし、ジントニック…などといった美味なお酒を出すようなお店も周囲にはないので、ひたすら仕事します…本当に。
 
昨夜期待していた処方がうまくいかず、日本から同行した二人とも少々心が折れてしまいそうになりました。僕が京セラの稲盛名誉会長から聞いた、実験に対する心構えに関する話が2つあるんだけど・・・と話を持ち出しました。
「稲盛さんは失敗したことはないのですか?」と聞いたときに稲盛さんはこう答えたんだそうだ。「ありません。なぜなら成功するまで続けるからです。続けているうちに、考えていたものとは違うかもしれないけど必ず成功の芽が出てきます。」
「成功の芽が出る人と出ない人の違いはなんでしょうか?」「こいつは気の毒で気の毒で放っておけないと神様に思ってもらえるまで努力すること」
同行した彼は、この話を聞くと、「まだその域にはまだ行ってませんね。もう少し頑張りましょう」と答えてくれました。
 
彼がどうして年齢を超えて尊敬に値する人と思わせるのだろうと考えてみたのですが、そういえばこの人から言い訳を聞いたことがないのを思い出しました。自分を守ろうという意識を超えているのかもしれません。結果に固執はするけど、自分の感情には固執がないようです。彼といっしょに仕事をすることの幸運を感謝した瞬間でした。
 
食事は、昼は工場の来客用の食堂で、夜は緑科の社員食堂です。
両方ともおいしい中華なのですが、たしかに食材はバラエティーに富んでいるのですが、
日本にいるときみたいに、昨日は中華、今日は和食、明日はイタリアン・・・
昼は中華だったから、夜はあっさりと和食で・・・という逃げがないので、少々「濃いなー」という感じになっています。まあ、それでも中華なので救われているのでしょうね・・・これが毎食ポリネシアン料理だとこうは行かないのかもいしれません。ポリネシアン料理がどういうものかよくわかってはいませんが…
さて、「こいつは気の毒で気の毒で放っておけないと神様に思わせる」までには、まだ道のりがあるようです。今日は工場は休みなので二人で朝から実験棟に缶詰めになっています。神様が「気の毒」に関しては敏感な方であることを祈りながら…
 

上段は2列です!

上段は2列です!

研究棟での戦いは続く!

研究棟での戦いは続く!