My eyes on you

20170529-1

My eyes on you …というシンプルな繰り返しが心に沁みてくる曲の作詞をした人の話を少しご紹介したいと思います。
 
ホレイショ・スパフォード(Horatio G. Spafford)は1828年にアメリカのシカゴで生まれています。弁護士であり、2つの大学の法学部の教授でもありました。彼の弁護士事務所は、シカゴで最も成功した事務所の1つであると言われました。彼には4人の子供がいたそうですが、唯一の男の子を幼くして伝染病で亡くします。その半年後、1871年に、17,400棟が全焼したシカゴの大火災に見舞われ、財産の大半を失います。
 
ようやく立ち直りかけた2年後に、心の癒しを求めて、ヨーロッパへの家族旅行を計画します。しかし、彼は出航直前になり、破産した自分を助けてくれた恩師の急場を助けるため、後から行くことになります。1873年1月15日、多くの乗客を乗せたフランス旅客船は、ニューヨークの港を出港しました。
9日後、彼はとても短い1通の電報を受け取ります。それは彼の奥さんからのものでした。「私だけ助かった」
 
1月22日の夜、みなが深い眠りに就いている午前2時頃、彼の家族を乗せた客船は大西洋の真ん中でイギリスの大型船ロックアローン号と正面衝突しました。そのわずか12分後に、船は226名を乗せたまま海底深くに沈んでいきました。この事故でスパフォードは3人の娘、全員を亡くします。奥さんだけが救助されました…さきほどの一言だけの電報はそのことを表していたものだったのです。
 
この詩の中で、私の目はいつもあなたに向けられているというmy eyes on you という歌詞が何度も出てきます。僕はこの部分を次のように解釈しています。youは、1つは子供のこと。決して子供たちのことを忘れないという気持ち。そして、彼はクリスチャンでしたから、もう1つのyouは神のことを意味しているようですが、僕はそれは言い換えれば「自分の心が自分の魂に誓った生きる目的」ただそれだけを見ていくことでこの試練を生きていける…という意味だと考えています。
アメリカでは、何らかの理由で子供を失ったり、何かに絶望をした人に、愛され続けている歌です。
 
世の中は残念ながら平等ではありません。人生という航海は、彼の家族が乗った客船のように、事故に遭うこともあるでしょうし、思わぬ嵐に木の葉のように翻弄されることもあります。僕らには、かならずこのような試練や不幸に見舞われるときがあります。どうして自分だけこんな目に合うのか?と不運を恨みたくなるときが必ずあります。
自分のことだけをやっていれば、誰に迷惑をかけているわけでもないんだから、それでいいじゃないか…そう思いたくなるときもあると思います。でも、100年に一度の津波も防げるはずだった防波堤をいとも簡単に津波が超えたように、不幸や試練は自分が営々と築いてきた壁やプライドをいとも簡単に破って、どうすることもできない圧倒的な力で僕らをなぎ倒します。
 
それでも、僕らは自分の涙を心の中で抱きしめながら、My eyes on youに帰っていく…確固たる自信なんてとてもありませんが…でもきっと僕自身もそうであってほしいと願います。それと同じようにみなさんもMy eyes on youに帰っていけるように…心から祈ります。