リーダーシップについて学ぶ その2

– リーダーシップとは自分の価値を高めるたけではなく、人の価値を高めることを考える心 –

20170528-1

昨日に続いて「グローバルリーダーシップ」を受講した報告です。
インターネットより情報格差が無くなり、組織がフラット化しました。「知っている」には意味がなくなりました。「その中の何を取り入れるのか、取り入れないのか」「どう行動に結び付けるのか」「どう動機を提供できるのか」…知っていることの量ではなくて、さっと使える引き出しがたくさんあるか…が問題になりそうです。
これは会社ばかりでなく、親子や夫婦の関係あるいは学校にも根底からの変化をもたらしているように思えます。親や夫や先生には、権威によるものではなく、フラット化に対応したリーダーシップによるけん引力が求められているのだと思います。
情報が集中していた時代と違い、いまは情報が高度化する一方で分散しています。昨日まで正しかったことが今日には訂正がされなくてはならない時代です。誰かの言うことを100%信じるのは危険ですし、100%でないから信じないというのもとても危険です。この部分は吸収する、でもこの部分は関係しない…良い情報を上手に吸収するクセをつけないと、高度な情報時代には対応できないように思います。
 
資産額が10兆円とも推定されているビル・ゲイツ。3人の子供には「携帯を持つのは14歳になってから」と決められていたそうです。インターネットやSNSの持つ可能性を最も深く理解しそれを現実化していくフロントに立つ人物が、一方でそのマイナスの部分にも冷静に目を向け対応しようとしています。彼は、「すべての子ども達は、大きな可能性を秘めている。重要なことは、質の高い時間を多く持つことだ」と語っています。社会や組織の成り立ちをも変革するような技術革新が続く社会では、良い面と悪い面を冷静に分け、良い面だけをどんどん吸収していく、あるいは表面的なことではなくより本質を求める素質がどうしても不可欠となるようです。
 
3人目のジョン・マックウェルは、リーダーをごく短い言葉で次のように表現しました。「あなたは、人々の価値を高めるために仕事をしていますか? それとも自分の価値を高めるために仕事をしていますか?…リーダーとは前者のことを言います。」さらに、リーダーを形成する要素は、①相手の状況を把握し、②意図的に(能動的に)自分の人生のことを考え、③人に存在価値を与える人である、と定義しました。
会社や人生が発展していくということは、上り坂にするということを意味しています。ですから発展したいなら、自ら上り坂を選択していかなくてはなりません…と語ります。彼の「発展」に対する基本的な姿勢は、稲盛和夫さんが言っている「2つのどちらを採用するかに悩んだ時には、難しい方を選択しなさい」と通じるものがあります。人は高きを求める一方で、怠惰に下って行こうとする生来のクセを持っていると警鐘をし、受け身の生き方をしていると、自動的に下りはじめてしまうと「不断の心構え」を強調していました。

リーダーとなる人、あるいは将来リーダーとなるべき人に彼は、「人の価値を認めていますか? 人の価値を高めるために働いていますか?」と最初に質問するそうです。
彼はリーダーに求められる「マインド」として次の5つを掲げました。

①人の価値を認める
②人の価値を高めるために考える
③人の価値を高める方法を考える
④人の価値を高めるために行動する
⑤人の価値が高まるように励ます
 
最後はビル・ハイベルズです。
「世の中は問題や災難であふれています。政府の役割は枠組みをつくることですが、その中核をなす心の変革は政府ではできません。政府に期待してはいけません。心の変革を起こす社会となるためには、良い経済と、良いビジネスに満ちた社会であることがどうしても不可欠となります。良いビジネスと良いリーダーを排出し続けることが、良い社会のバロメーターです。そのことに貢献するために世界の128か国以上に組織を展開しているのです。」
「教育という場ももちろん必要ですが、人の心の変革はやはり実社会において実現できるもの。社会が変わらなくてはならない。そのために、あなたができることを考えるのは、この時代に生きる人の責任です。いやおうなしに私たちは社会の渦の中にいるので、無関心はすなわち悲惨な結果を生む元凶となります。」日々の生活に精いっぱいで、僕らはともすれば足元ばかりに目を向けがちですが、目線を上げて、広く視界を取ることが必要なようです。彼は「自分のやるべきことさえやっていれば…」という価値観に対してかなり批判的です。
 
「これまでの経験から、すぐれたリーダーはこの種の勉強の機会を積極的に取り入れることがわかっています。野球チームの監督、子供の教育、誰かに影響のある人すべての人に知ってほしいのです。今の社会が本当のリーダーを必要としていることとリーダーの意味を」
(そういえば、セミナーはこのころに6時を回っていました。OLの参加も目立ち始めていました)

「リーダーは長期的にものごとをみる姿勢が必要になります。」彼はチームの発展は一朝一夕でできるものではないと説き、そのリーダーを形成する6つの心の姿勢を次のように紹介しました。

●自分を知る
●自分に対する説明責任を果たしている(言い訳をすることの対局)
●1つの失敗で恐れない
●自分には関係ないという気持ちを捨てる
●新しいことにチャレンジする
●チームの発言の意味を考える

セミナーの最後に、彼は「人をリードするためには、まず自分をリードできないといけない」と重要なテーマを掲げました。「リーダーシップには失望がつきもの。リーダーの持つ責任を考えるとこわいとさえ感じるものです。リーダーたる人はまず自身の心が満たされていないといけない。健全なリーダーとは、正しい人を、正しい場所で、正しい動機を与える人なのですから」
彼の講演は、厳しい、心の中にくさびを打ち込むような率直な物言いの一方で、人や社会に対する温かい愛情を感じさせるものでした。
 
さて後日談ですが、彼の講演に感銘を受けて、その後すぐに彼の著書を読んだという日本の女性実業家にお会いした際にお聞きした話です。彼の著書には「スケジュール管理は、仕事ややるべきことのスケジュールだけではダメ、どういう人間になりたいのか…そのための時間がスケジュールされていないといけない」と書いてあったそうです。思わず二人で「ん~」と唸ってしました。