社会の灯る光になるための旅のはじまり(2) 私たちは鎖につながれた象

20161205-1

さて、前回に続いてセミナーで印象に残った・感銘を受けたお話をご紹介しましょう。
 
いくら自分の強みを見つけたとしても、それを伸ばす妨げとなっている壁を壊さないと、強みは発揮されません。その壁は誰もが持っている、ある意味でやっかいな、自分で勝手に作り出したものです。大きくわけて2つの種類が存在します。①育った環境、と②社会的な束縛、です。
 
①の育った環境のことは、「象と鎖」の話がそのことをよく説明してくれます。小象を小象の力では決して抜けることのない杭と結んだ鎖につなぎます。小象は最初は何とかして鎖がぴんと張ったその先に行こうと頑張ります。しかしやがてどうやってもその鎖の長さより先には行けないことを学びます。そのまま象は成長します。やがて大きくなった象はその杭を抜くだけの十分な力があるにも関わらず、それより遠くには行こうとはしないそうです。
 
②は「サルとバナナと水のお仕置き」の話がそのことをよく説明してくれます。サルをグループにして囲いの中に入れます。中央に梯子があって、その梯子にのぼると届く高さにバナナがつるしてあります。当然サルは梯子をのぼってバナナを取ろうとします。すると、取ろうとしたサルばかりでなく、グループのサルにも高圧の水が噴射されます。バナナを取ろうとしたサルはたまらずバナナを取るのを諦めます。グループの他のサルたちもとても不快な思いをすることになります。これを繰り返すうちに、どのサルもバナナを取ろうとはしなくなるそうです。サルを1匹囲いの外に出し、入れ替わりに新入りのサルを仲間入りさせます。水の噴射のことを知らない新入りのサルは真っ先にバナナを取ろうとします。そうすると周りのサルたちはそれを必死に阻止します。新入りのサルはバナナを取ってはいけないことを学びます。一匹出して新入りを入れて…を繰り返します。ついには、水の噴射の経験をしたことのあるサルは一匹もそのグループの中にはいなくなります。しかし、それでも、バナナを取ろうとするサルはいないそうです。そして、同じように新入りの行動を必死に阻止するそうです。
社会的な束縛の中には、意味を失ったものがたくさんありますし、周囲の目を気にする気持ちが、私たちの鎖となっている例は、おそらく挙げたらきりがないことでしょう。
 
育った環境が原因にせよ、社会的な束縛によるものにせよ、否定的な思いクセを直すのはたいへんです。一念発起したとしても、脳の回路がそれを放棄するようになるまでには少なくても20日はかかり、前向きな考えに変わるまでにはさらに20日が必要だそうです。
 
僕の経験でも、育った環境や周囲から受けたマイナスの経験から脱却することは容易ではないことは理解できます。
記憶には、「足跡」と「化石」があるそうです。足跡は風や雨により容易に消えるものです。しかし、化石はすでに実態がないにも関わらず記憶の世界の中に存在し続け、それが生きていたときのことを呼び起こします。悪い経験を、学びとしてとらえ、足跡を化石にしない知恵を持つことはとても重要なようです。
 
では、化石を消す魔法の言葉はないのか? 1つあるそうです。それは「許す」ということだそうです。
僕は人と話すとき強く印象を受けることがあります。それは、親や友人のことを悪く言う人に会うと、年齢に関係なく「大人になれない人」という印象を受けてしまいます。もしかしたら、化石の多い人なのかもしれません。
 
講師は次のように言っていました。「間違ったことを正しかったと思いなさいということではないのです。正しいか間違っていたかという次元と許すか許さないのかという次元は違うという認識を持つということです。心の中に過去の鎖があることが「自分の強みの成長を阻害する最大の壁になる」という科学的な事実を言っているのです。」
そして、講師は休憩に入る前に次のようにその講を結びました。「正しい判断は、『正しい場所で、正しいペースで、正しい人といっしょに行うという3つのどの要素が欠けても生まれない』ということを忘れないでいただきたい。正しい場所とは…心理学では『安全な場所』という言い方もされます。言い換えれば、心に壁がなく平安である状態を言います。」
 
 
次回に続く。