レッテルを貼らない

1週間ばかり中国に行ってました。いま中国では真剣に環境対策に取り組んでいるようです。僕が訪れた地域のある業界でも、環境対策が不備であるという理由で2社が操業停止状態になったそうです。

環境に配慮した日本発の新しい表面処理技術を適用できるようにするのが今回のミッションです。中国でさかんに生産されている対象製品は、今では日本の工場ではほとんどお目にかからないものになりました。コストの問題から加工や製造は海外に依存するようになりました。そのため、テーブル実験は日本で行ないましたが、本格的実験は中国で行なうより他にありません。訪問したころにちょうど運悪く-30℃の強い寒気が北方を覆ったため、通常なら朝は4~5℃で昼間は15℃を超えていた気温が、一気に朝は-5℃、昼間でも4℃という寒さに急変しました。屋根はあるものの遮るものがほとんど無い中で、実験は朝から夜まで繰り返されました。

なかなか良い条件が見いだせず苦戦する僕らに、現場の方々は積極的に提案や助言をくれました。休憩時間には3~4人が集まり対応策をいっしょに考えてくれました。実験最終日の朝だったと思います。リーダー格の人物が、1枚の紙を私たちに手渡しました。彼もかつてはこの工程の担当者で、いろいろと試行錯誤をしたそうです。そのときの記録ノートを昨夜引っぱりだして、何か参考になることはないかとさがしてくれたそうです。そのメモにはいくつかの化学式があり、その最後にこう結ばれていました。「確実に良い方向に進んでいると思います。あなたがたの成功を確信しています」

諦めかけた時、僕らはある条件の試験サンプルが「最終工程まで無事に異常なく終わることができた」という一報を聞きました。実験器具を片付けているとあのリーダー格の人物は、作業が終わった工程に一人残り黙々と生産設備を清掃していました。

20151129-1

「中国人は…」という言葉を何度となく聞いてきました。しかし、その工場にいて僕らに提案をし、励ましをくれた中国人は、そのレッテルとはほど遠い方々でした。そういう人もいるし、そうでない人もいる…のだと思います。

このことは国単位でも、地域単位でも、そして個人の単位でもあるのだと思います。そういう時もあるだとうし、そうでない時もある…。レッテルを貼ることで安心する…そしてついには相手をそのレッテルの中に押し込んで評価しようとする…これはとても危険であるように思えます。ましてや、人は変化し成長します。今日はそうだったかもしれないけど、明日は違うかもしれません。

さっきはダメだったけど、次はうまくいくかもしれない…その結果が成功に結び付いたことは言うまでもありません。レッテルを貼らずに前向きにシフトチェンジできる状態でニュートラルで待つ…でありたいですね。

帰路の機窓から見た雲間の夕焼け

帰路の機窓から見た雲間の夕焼け