突然声をかけられた
「風はどっち向きだい?」
声の主は土が少し盛り上がったところにあいた穴の中にいた
僕は答えた。「森の方から吹いてくる」
今度の声はさっきより少し穴の奥からしてくるようだった
「そうかあ、もうすぐ季節が変わる。昨日はいつもやさしいとは限らない。明日は見えないまま。風はいつも同じ向きで吹いているわけじゃない…。おまえさんはどうやって次の季節を越えるつもりなのかな?」
「よくはわからない。でもどこで歯を食いしばるべきかは、少しは学んだつもりだよ」
もうもぐらの声がすることはなかった